医療ローンが払えないなら専門家に相談して債務整理をしよう
更新日:2024/03/06
保険が適用されない治療費用の支払いを助けてくれる医療ローン。
保険適用外の手術や入院だけでなく、自由診療の美容系治療にも利用できますよね。
しかし、無理な医療ローンを組んで返済できない人もいます。
そんな人に検討してほしいのが、債務整理です。
債務整理と聞くと人生の終わりのようなイメージがあるかもしれませんが、そんな事はありません。
無理な返済から解き放たれ、再出発できる手段ですよ。
この記事では、債務整理について紹介するとともにクーリングオフにも触れていきます。
債務整理に至るまでに、「必要のない契約だった」「経済的に無理のある契約だった」と分かった時点で、クーリングオフを利用できるかもしれません。
まずは、医療ローンの返済ができなかったらどうなってしまうのか、見ていきましょう。
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2級FP技能士 田中 宏一郎 氏 - 2級FP技能士。これまでに5社の消費者金融カードローン(アコム・プロミス・アイフル・SMBCモビット・LINEポケットマネー)、3社の銀行カードローン(楽天銀行スーパーローン・三井住友銀行カードローン・みんなの銀行ローン)と契約。過去には父の借金で一家離散を経験するも、奨学金のおかげで大学進学。奨学金の完済と同時に住宅ローンの返済がスタート!借金の酸いも甘いも知るアトムくんの編集長。
返済できなかったら財産差し押さえのリスクも
医療ローンを滞納すると、最終的には大きな財産が差し押さえられるリスクがあります。
その前に発生するのが、延滞損害金です。
通常の利息に、実質年率20.0%が加算された額を返済すると考えてください。(ただし、契約した医療ローンにより異なる)
滞納に気づいた段階で素早く返済すれば良いのですが、返済遅延を何度が繰り返してしまうと個人信用情報機関に記録が残ります。
ブラックリスト入りと言うとイメージしやすいですよね。
※個人信用情報機関とは、ローンやキャッシングの利用や返済状況を個人情報とともに記録・管理している機関のこと
個人信用情報機関に記録が残ると、ローンを組んだりキャッシングしたりすることが難しくなるんです。
さらに、返済遅延を放っておくと督促状が届き、一括返済を請求されます。
督促状も無視していると、法的手続の強制執行によって給料や家などの財産が差し押さえられることも。
そうならないためにも、医療ローンを組んでから約束通りに返済できないと分かった時点で債務整理を検討してください。
債務整理には3つのケースがあるので、次項にて紹介します。
医療ローン返済の負担が軽くなる債務整理
債務整理は国が認めている借金を整理する方法です。
債務整理には返済する元金を減らすメリットと、約5年~10年間はブラックリスト入りするので、新たなローン審査に通りにくくなるデメリットがあります。
債務整理は、弁護士や司法書士といった専門家に相談して手続きをおこなってもらいますが、以下のような場合は司法書士では対応できないので注意してください。
- 1社につき140万円以上の債務がある場合
- 簡易裁判所以外への訴訟
※弁護士は最高裁判所までの訴訟代理権あり
債務整理には3つのケースがありますので、1つずつ紹介します。
- 任意整理
- 民事再生(個人再生)
- 自己破産
【1】任意整理
任意整理は、医療ローンを組んだときの条件では返済が困難だけれど返済能力がゼロではない人が利用したい債務整理です。
以下のような内容をローン会社と交渉し、返済額の減額を目指します。
- 借金利息の免除
- 遅延損害金の支払免除
- 3年~5年の返済期間延長 など
気になるのは、本当にカード会社やローン会社が任意整理を受け入れてくれるかどうかですよね。
弁護士法人アディーレ法律事務所によると、貸金業者としては債務者に自己破産されると1円もお金を回収することができなくなるので、任意整理に応じてくれる可能性は高いそうです。
任意整理のメリットとデメリット
任意整理は債務整理の中で一番メリットが多い手続きです。
- 手続きが比較的簡単
→収入や資産を証明する書類の用意が不要 - 直接の取立てがなくなる
→専門家に任意整理を依頼すると債権者は取立てできなくなる - 財産を維持できる
→今の生活に与える影響が少ない - 利息が免除される
→返済負担が軽減される - 裁判所を通さない
→家族や職場などにバレにくい - 官報に掲載されない
→誰かにバレる可能性が低い - 手続き中の職業や資格の制限がない
→債務整理手続き中は一部職業につけない決まりがあるが対象外
- 借金の全額は免除されない
→借金減額の効力が低いので返済は続く - ブラックリスト入りする
→5年~10年間新たなローンが組めない
【2】民事再生(個人再生)
民事再生は、2000年4月に施行された債務整理方法です。
住宅ローン以外の借入総額を約1/5に減額し、原則3年かけて分割返済を目指すので、借金額が大きい人が利用したい方法。
任意整理と同様に財産は維持できますし、任意整理よりも借金の減額幅が大きいですよ。
ただし、裁判所に出頭して手続きをするので、自宅に書類が届いて家族にバレるリスクはあります。
民事再生のメリットとデメリット
民事再生は任意整理よりも借金額が大きく減額されるのが大きなポイントです。
- 直接の取立てがなくなる
→専門家に任意整理を依頼すると債権者は取立てできなくなる - 大きな財産を処分されない
→持ち家に住み続けられる - 住宅ローン以外の借金を大幅に減額できる
→任意整理よりも減額額が大きい - 強制執行を回避
→債権者が強制執行をおこなえなくなる - 手続き中の職業や資格の制限がない
→債務整理手続き中は一部職業につけない決まりがあるが対象外
- ブラックリスト入り
→5年~10年新たなローンが組めない - 官報に掲載される
→住所と氏名が載るので知り合いが官報を見ればバレる - 手続きが複雑
→任意整理よりも専門家に任せる必要性が高く、依頼費用も高くなる
【3】自己破産
自己破産は、大幅に給料が減ったり病気で働けなくなったりして、「この人はこれ以上返済できない」と裁判所が判断すると借金が免責される債務整理です。
借金が一掃されるものの、家が競売にかけられたり一部の財産が処分されたりします。
ひとつ気をつけたいのは、自己破産しても免責されない債務があるということ。
税金や慰謝料、養育費は非免責債権とされており、支払いは免除されませんので注意してください。
自己破産をすると人生のすべてが終わると誤解している人も少なくありません。
しかし、自己破産は犯罪ではなく生活再生のためにおこなう精算方法です。
すべての家財道具を差し押さえられことはありませんし、5年~10年経てば新たにローンを組むこともできますよ。
自己破産のメリットとデメリット
自己破産は借金がゼロになるのが一番のメリットです。
- すべての借金がゼロになる
→借金生活が終わる - 強制執行を回避
→債権者が強制執行をおこなえなくなる
- ブラックリスト入り
→5年~10年新たなローンが組めない - 官報に掲載される
→住所と氏名が載るので知り合いが官報を見ればバレる - 手続き中の職業や資格の制限がある
→債務整理手続き中は一部職業につけない決まりがある - 財産を処分される
→生活に必要最低限の物以外を処分される - 引っ越しが困難
→手続き中に住居を移転する場合は裁判所の許可が必要 - 手続きが複雑
→専門家に任せる必要性が高く、依頼費用も高くなる
債務整理を詳しく説明してきた中で、弁護士などに相談する必要があることが分かりましたよね。
実際、依頼料ってどのくらいになるのか次項で見ていきましょう。
専門家へ債務整理を依頼する費用は4万円以上
弁護士や司法書士に債務整理をお願いする依頼料の相場を調べてみました。
任意整理 (1社あたり) |
民事再生 | 自己破産 (1社あたり) |
|
---|---|---|---|
A社 | 4万円 |
|
31万円 |
B社 | 4万円 |
|
33万円 |
C社 | 4万円 |
|
30万円 |
※住宅ローン特例とは、引き続き住宅ローンを返済することにより家を処分されないようにする制度のこと
上の表からそれぞれの平均額は以下のとおりです。
- 任意整理 4万円
- 民事再生 36万円~44万円
- 自己破産 31万円
債務整理をしなければならない状況下ですから、上記金額を簡単には用意できないと思います。
そんな時に相談できるのが法テラスです。
依頼料は法テラスに相談
日本司法支援センター法テラスは国が設立した法人で、さまざまな法的トラブルをサポートしてくれる機関です。
民事法律扶助という制度のもと、お金がない人に無料で法律相談をおこなったり弁護士や司法書士に支払う費用を立替えてくれたりします。
依頼料に不安がある人は一度相談してみてください。
ここまでは債務整理についてお伝えしてきました。
最後に、契約そのものを取り消せるクーリングオフと中途解約手続きについて紹介します。
不要な医療契約を破棄するときに役立つクーリングオフと中途解約手続き
医療ローンを利用したあと、よく考えると必要のない契約だったと思ったときに、契約を解除できるのがクーリングオフです。
また、クーリングオフ期間を過ぎたあとでも可能な中途解約手続きがあります。
どんな制度なのか見ていきましょう。
クーリングオフ
自費治療をおこなう目的としてエステがありますよね。
たとえば、体験だけのつもりが施術中に使ったオイルやクリームを勧められて、高額な商品を分割で購入したなんてことが起こるかもしれません。
しかし家に帰って冷静になり、解約したくなった場合にクーリングオフが利用できます。
この場合、クーリングオフの特定継続的役務提供に該当するので、契約日当日から8日以内なら契約を無条件で解除できますよ。
中途解約手続き
たとえば、長期間にわたるエステコースを契約したけれど、やっぱり止めたくなったり途中で支払いが困難になったりすることもあるかもしれません。
すでにクーリングオフ期間が過ぎてしまった場合でも、中途解約手続きをすることで契約を解除できます。
中途解約手続きができる条件は以下のようにいくつかあるので確認してください。
- 契約日から9日以上経過している
- まだサービスを受けていないor一部サービスだけ受けた
- 1ヶ月以上の一定期間のサービス
- 一定金額以上の契約 など
法令で決められた金額を支払い、すでに支払った金額の方が多かった場合は返金されます。
すでに受けきったサービスの支払いができない場合は、債務整理をおこなってください。
債務整理とは違い、クーリングオフも中途解約も自分で手続きできます。
自分一人で手続きをするのは不安という人は、全国の消費生活センターに相談してください。
消費生活センターの電話番号が分からなければ、消費者ホットラインに連絡を。
近くの消費生活センターを紹介してくれます。
消費者ホットラインに繋がらない場合は、平日バックアップ相談へ連絡してください。
こちらでも近くの消費生活センターを紹介してくれますよ。
まとめ
医療ローンの返済ができないと分かった時点で、債務整理を検討してください。
医療ローンを利用しているということは、大きな費用の返済が長く続きます。
自分ひとりでは解決できない状態ですから、専門家に頼ってください。
経済的にも精神的にも、あなたの生活を安定させてくれますよ。