在学中の繰上返還で奨学金の返済負担は減らせる!方法やメリットを解説

更新日:2024/03/12

在学中の繰上返還で奨学金の返済負担は減らせる!方法やメリットを解説

日本学生支援機構の奨学金制度は、低い金利、もしくは無利息でお金を借りられますが、卒業後に始まる返済は大きな負担になります。

ある程度金銭的な余裕があるなら、繰上返還を考えてみましょう。

繰上返還とは、返還期日の到来していない割賦金(※)を前倒しで返還すること。
繰上返還をすれば、完済までの期間短縮ができるうえ、その期間にかかるはずだった利息分を節約できるのです。

在学中に奨学金の繰上返還ができる場合や方法、メリットなどを解説します。

できるだけ早く完済して、返済のストレスから解放されたい人はぜひ参考にしてください。

※割賦金・・・何回かに分けて支払うお金のこと。

アトムくん編集長_田中

2級FP技能士 田中 宏一郎 氏
2級FP技能士。これまでに5社の消費者金融カードローン(アコム・プロミス・アイフル・SMBCモビット・LINEポケットマネー)、3社の銀行カードローン(楽天銀行スーパーローン・三井住友銀行カードローン・みんなの銀行ローン)と契約。過去には父の借金で一家離散を経験するも、奨学金のおかげで大学進学。奨学金の完済と同時に住宅ローンの返済がスタート!借金の酸いも甘いも知るアトムくんの編集長。

在学中に奨学金を繰上返還できる条件とは

在学中に奨学金を繰上返還するには、奨学金の辞退をしなければなりません。

奨学金のシステムは1年ごとの契約更新のため、1年間奨学金を利用後2年目からは必要なくなった場合などは辞退可能です。

在学中に辞退すると、在学猶予申請をして卒業するまで返還期限を延ばすか、繰上返還するかを選ぶことになります。

繰上返還は、学校が辞退処理をした月の翌月または翌々月から可能です。

在学中に繰上返済する3つの方法

まず在学中の大学の窓口に奨学金の繰上返済について問い合わせをしましょう。

その後、必要に応じて以下3つの方法から奨学金の繰上返還を行います。

奨学金の繰上返還を行う方法
  • スカラネット・パーソナルから申し込み
  • 電話で申し込み
  • 郵送・FAXで申し込み

自分に合った方法を選んで、日本学生支援機構へ申込しましょう。

スカラネット・パーソナルから申し込み

現在奨学金の貸与、または返還中に利用できる、スカラネット・パーソナルを通じて繰上返済の申込ができます。

スカラネットパーソナルのホームページよりトップ

参照元:スカラネット・パーソナルのホームページ

スカラネット・パーソナルからの申込期間は、繰上返還を希望する月の前月中旬~当月中旬までです。

たとえば2月に繰上返済したい場合は、1月中旬~2月中旬の間の申込が必要になります。

すべての手続きをネットで行えるため、もっとも手軽な申込方法です。

電話で申し込み

電話で申し込む場合は、奨学金返還相談センターのナビダイヤルに連絡します。

電話:0570-666-301
平日の9時~20時まで受け付け(土日祝・年末年始を除く)

申込期間は、繰上返還を希望する月の前月です。

申込できる時間帯や曜日が限られているので注意しましょう。

申込が受理されると、繰上返還の引き落としをする月の中旬頃、日本学生支援機構より金額を記した文書の通知が届きます。

郵送・FAXで申し込み

郵送・FAXで申し込む場合は、まず日本学生支援機構のHPより繰上返還申込書のPDFファイルをダウンロード・印刷し、必要事項を記入のうえ提出します。

宛先:〒162-8412
東京都新宿区市谷本村町10-7
日本学生支援機構 奨学事務センター
FAX:03-6743-6683

申込の締め切りは、繰上返還を希望する月の振替日の1ヶ月前です。

また、繰上返還の振替希望月は、繰上返還申込書の提出日より3ヶ月以内で記入します。

繰上返還申込書に記入漏れがあると、希望した月に繰上返還ができなくなる可能性がありますので気をつけましょう。

申込受理後、電話申込と同じく繰上返還の引き落としをする月の中旬頃に金額を記した文書の通知が届きます。

在学中に繰上返還する3つのメリット

在学中に繰上返済すると以下3つのメリットがあります。

在学中に繰上返済するメリット
  • 機関保証制度を利用した場合保証料が一部返ってくる
  • 将来の返済負担率を減らせる
  • 第二種奨学金の場合は利息返済がなくなる

1つずつ見ていきましょう。

機関保証制度を利用した場合保証料が一部返ってくる

保証人を立てずに機関保証制度を利用していた場合、在学中に繰上返済して奨学金を完済すると、保証料の一部が返還されます。

繰上返済した分、保証期間が短縮されるからです。

不要となった保証期間分の保証金が返還されるメリットがあります。

将来の返済負担率を減らせる

奨学金を在学中に返せば返済負担率が減らせ、将来の住宅ローン利用時にメリットがあります。

返済負担率とは、年収のなかでどのくらいの返済金額を占めているかを割合で表した数値で、将来住宅ローンを利用するさいの基準となるのです。

住宅ローンを借りるさいに奨学金が完済済みなら、返済負担額がその分下がるため希望の融資が受けやすくなります。

一方、住宅ローンを借りる時点でまだ奨学金を返済中の場合は奨学金が返済負担率を上げてしまい、住宅ローンの審査に通らない、希望した額の融資が受けられない、ということがあるのです。

返済負担のほかにも、住宅ローン利用の面で在学中の繰上返済はメリットがあります。

第二種奨学金の場合は利息返済がなくなる

奨学金には第一種(無利息)と第二種(利息が付くタイプ)があります。

このうちの第二種奨学金を利用している場合、繰上返済分が短縮となりその分の利息返済がなくなります。

繰上返済するとどのくらいの利息が節約になるのかを、次に解説します。

第二種奨学金の利用者の利息負担はどのくらい減る?

返還期間、返還回数、一括繰上か部分繰上かなど、奨学金の返済状況によって節約できる利息は異なってきます。

特に利息を大きく節約できるのが、以下の場合です。

利息を節約できるケース
  • 借上総額が大きい
  • 早い段階で繰上返済をする
  • 一括返済

第二種奨学金の利用者が部分繰上した場合の例を紹介します。

例:第二種奨学金を返還中のA子さんの場合

例:第二種奨学金を返還中のA子さんの場合
  • 借用金額 1,200,000円
  • 年利率 1.9333333%
  • 月賦返還
  • 返済回数 144回(うち1回~33回までは返還済み)
通常返還の場合 34回目~43回目の総返還額は、94,230円
繰上返還した場合 34回目(当月分)+35回目~43回目(繰上分)で、総返還額は、81,043円

繰上返還をすると、通常返還した場合にかかる35回目~43回目の利息13,187円(=94,230円-81,043円)がかかりません。

43回目まで返還を終えたことになり、次回は44回目の扱い、つまり返済期間が9ヶ月短縮されたことになるからです。

9回分の返済額を部分繰上することで、13,187円の利息を節約できました。

例からも分かるように、第二種奨学金の利用者が繰上返還をする場合、繰上額が大きければ大きいほど、利息が節約できます。

また、早い段階で繰上返還をすればするほど、その後の利息負担を軽減できるでしょう。

利息負担が大きいのは元金が多い初期の段階だからです。

利息は元金に対して発生するので、月々の返済額は同じでも、返済初期の内訳は利息の割合が大きくなっています。

もっとも利息節約の効果が大きいのは、残りの全額を一気に返してしまう一括繰上です。
完済すると、日本学生支援機構から返還完了通知が送られてきます。

第二種だけでなく、第一種奨学金を借りている場合にも繰上返済のメリットはあります。

将来住宅ローン利用時の返済負担率を下げられるのは、第一種奨学金利用者も同じだからです。

利息分の返済はありませんが、将来的なメリットは第一種利用者も得られます。

まとめ

在学中に奨学金の繰上返還をする方法やメリットについて紹介しました。

繰上返還は、返済にかかる期間を短くして利息負担を減らすための手段です。

奨学金の返済は、くれぐれも無理のない範囲で行うようにしましょう。

アトムくん編集長_田中
監修者からのコメント
田中 宏一郎

繰上返還に注力するあまり、生活に悪影響を及ぼしてしまっては本末転倒です。

繰上返還をして一刻も早く完済したほうがよいかは、状況によって異なります。

繰り上げて返済したからといって、翌月以降の最低返済額が少なくなるわけではないからです。

奨学金の返済をどれだけ優先させるかは、自分の考えやライフプランに基づいて決めましょう。

「一刻も早く返してすっきりさせたい!」「近い将来住宅ローンを組む予定がある」なら返済を優先させた方がいいです。

卒業後に結婚やお金のかかる予定を控えているなら、少しでも手元にお金を置いておきたいかもしれません。

周囲の情報に振り回されるのではなく、家族やご自身の意思を尊重するのが重要ですよ。