転職・独立時には要注意!社会保険と国民健康保険の違い

更新日:2018/05/31

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世の中には「○○保険」という言葉がたくさんあって、整理して理解するのは難しいですよね。

そんな中でも今回は、紛らわしい「社会保険(社保)」と「国民健康保険(国保)」との違いについて解説しようと思います。

両保険はよく似ていますが、実は細かいところで内容が違うので、どちらの方が有利なのかについても検討しましょう。

この2つの違いを知っておかないと、法人などの勤務先から独立して自営業者になる時や、退職するときに大損するかもしれません。

近い将来にそんな予定が控えている人は、特に必見です。

勤め人のための社会保険、自営業者や無職者のための国民健康保険

2つの保険はともに、日本の「国民皆保険※」制度を支える、とても大切な保険です。
※国民全員をなんらかの公的医療保険に加入させる制度。

公的保険は強制加入ですから、どちらの保険にも加入しないということは許されません。

社会保険と国民健康保険を簡単に分けると、社会保険は主に会社員のような民間企業で働く人のための保険で、国民健康保険は自営業者(個人事業主)や無職者のための保険です。

定年退職により社会保険から脱退した人は、国民健康保険に加入することになります。

この加入対象者が異なる点が、社会保険と国民健康保険のもっともわかりやすい相違点です。

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ただし、この2つの保険は、実は同列に扱うべき保険ではありません。

なぜなら、社会保険とは厚生年金保険・医療(介護)保険・労災保険・雇用保険の4つの保険の総称であるのに対し、国民健康保険は医療(介護)保険単体を指すからです。

保険の種類 勤め人に適用される公的保険 自営業者・無職者に適用される公的保険
年金 社会保険 国民年金保険
医療・介護 国民健康保険
労災 なし
雇用 なし

また、社会保険加入者は育児休業中の保険料が免除されるのに対し、国民健康保険の加入者は育児休業中も保険料を払い続けなければなりません。

このように、社会保険と国民健康保険では、加入対象者だけでなく、保障内容や被保険者※の待遇も異なるのです。
※被保険者・・・保険の対象となる人のこと。

社会保険の健康保険は保障が手厚い

国民健康保険は自営者や無職者が加入する医療保険です。

医療保険とは、病気やケガの治療にかかる医療費を負担してくれる保険のことをいいます。

国民健康保険が医療保険であるのに対し、社会保険は医療保険のほかにも、雇用保険・労災保険・雇用保険などを含めた4つの保険の総称ですので、国民健康保険と社会保険との保険内容とを正しく比較するには、「社会保険のなかの医療保険」と「国民健康保険」とを見比べなければなりません

社会保険の医療保険のことは、健康保険といいます。

さまざまな公的医療保険の種類

医療保険の種類 加入対象
国民健康保険 自営者や無職者など
健康保険(社会保険) 会社員など
共済組合 公務員や教職員など

それでは、国民健康保険と健康保険の内容を比べていきましょう。
細かい相違点を説明すると話が難しくなるので、ここでは大まかな保障内容をまとめていきます。

国民健康保険の保障内容

医療費 自己負担額が、3割(70歳以上は1~2割)に抑えられる。
高額医療費 自己負担額が、3ヶ月目まで約8万円に抑えられる。
4ヶ月目以降の自己負担額が、4万4,400円に抑えられる。
出産費 本人が出産したときには、42万円の出産育児一時金が給付される。
埋葬料 本人死亡時には、約1~5万円が給付される。

※市区町村が運営している国民健康保険は、地域ごとに保障内容が多少異なります。

健康保険(社会保険)の保障内容

医療費 自己負担額が、3割(70歳以上は1~2割)に抑えられる。
高額医療費 自己負担額が、3ヶ月目まで約8万円に抑えられる。
4ヶ月目以降の自己負担額が、4万4,400円に抑えられる。
出産費 本人あるいは扶養家族が出産したときには、42万円の出産育児一時金が給付される。
埋葬料 本人あるいは扶養家族の死亡時には、5万円が給付される。
傷病手当 業務に関係のない病気やケガで働けないときは、1日あたり本人収入の約3分の2が給付される(上限1年6ヶ月)
出産手当 本人が出産のため働けないときには、1日あたり本人収入の約3分の2が給付される。(産前産後合計した98日間に限る)

医療費の負担軽減や出産育児一時金に関しては、国民健康保険と健康保険ではあまり差がありません。

しかし、傷病手当や出産手当など、被保険者が病気や出産により休業を止むを得なくなったときに出る保障は健康保険でしか受けられません。

社保の健康保険と違って、国民健康保険では病気や出産により本人収入が止まってしまったときに何の保障も受けられないのです。

国民健康保険よりも社保の健康保険に入っておいたほうが、手厚い保障が受けられるというわけですね。

社会保険料は雇用主と折半だから負担が軽い

毎月支払う保険料は、社会保険と国民健康保険でどちらの方が安いのでしょうか。

まずはじめに指摘しておくべきなのは、国民健康保険の保険料は世帯主が全額自分で納めなければならないのに対し、社会保険の保険料は勤めている会社と折半できるということです。

単純に考えれば、国民健康保険と違って社会保険は受ける保障を半額の保険料で買っていることになりますから、この時点で社会保険のほうがお得と考えられますね。

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社会保険と国民健康保険の保険料は加入している人ごとに異なるので、まずは両保険の計算方法を比べてみましょう。

社会保険の健康保険 国民健康保険
計算方法 給与をもとに計算 前年の所得・資産などに応じて計算
家族の保険料 扶養家族の人数に関わらず、保険料は不要 世帯の人数分の保険料を支払う

社会保険と国民健康保険の保険料について最も大きな違いは、家族の保険料の扱いです。

社会保険では被保険者1人分の保険料で扶養家族全員の保障が受けられるため、たとえ扶養家族が何人であろうと保険料は変わりません。

つまり社会保険では、扶養家族が多ければ多いほど家族1人あたりの保険料は少なくなっていきます

それに対してそもそも「扶養」という概念がない国民健康保険の場合は、家族が2人なら保険料は2倍、3人なら3倍、・・・と家族の人数によって保険料に変動があります。

ですので、生計を共にする家族が多ければ多いほど、国民健康保険は損、ということになります。

とはいえ、「保障は少なくても良いからとにかく安い保険に入りたい!」という方の場合は、家族が少なければ社会保険の保険料よりも国民健康保険の保険料のほうが負担額が安く済むケースもあります。

国民健康保険の保険料は市区町村によって細かい計算方法が異なるため、正確に負担額を比較したい方は市区町村の役所で計算してもらいましょう。

社会保険の加入対象となる「106万円」の壁

自営者・無職者のための保険である国民健康保険よりも、勤め人のための保険である社会保険のほうが何かとメリットが多いということはご理解いただけたでしょうか?

さて、この勤め人のための保険である社会保険は、実は勤め人であれば誰でも加入できるというわけではありません。

社会保険に加入するためには下記の5つの条件を満たす必要があるのです。

社会保険の適用条件

  • 1週間の所定労働時間※が20時間以上であること
  • 1ヶ月の所定内賃金※が8万8,000円以上であること
  • 1年以上の雇用期間が見込めること
  • 学生でないこと(夜間・通信・定時制の学生は加入対象)
  • 以下のいずれかにあてはまること

①従業員数が501人以上の会社で働いている
②従業員数が500人以下の会社で働いていて、社会保険の加入について労使※で合意がなされている

※所定内労働時間・・・残業時間を含めない労働時間
※所定内賃金・・・通勤費や賞与、残業代などを含めない賃金
※労使・・・労働者と使用人のこと。

従業員数500人以下の会社で働いている方が社会保険に加入するためには、会社の事業主と、そこで働く労働者の1/2以上の合意が必要です。

会社を運営する事業主としては、社員を社会保険に加入させることで会社の出費がかさむわけですから、社会保険加入に首を縦に振りたくない場合もあるでしょう。
しかし、社員が一人でも多く社会保険に加入することには「会社のイメージアップに繋がる」「優秀な人材を呼び込みやすくなる」など会社にとってのメリットもたくさんあるため、社会保険に加入したい労働者としては何としてでも事業主を説得したいところです。

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社会保険に加入できるのは、会社に勤める正社員だけではありません。

上記条件を満たしていれば、契約社員や派遣社員などの非正規雇用者、パートやアルバイトといった短時間労働者なども、社会保険に加入できます。

「非正規雇用者だけど社会保険に加入したい」という方は、社会保険の適用対象となる労働時間・賃金を目指して労働環境を見直されてみてはいかがでしょうか?

ただし、すでに配偶者や親の扶養に入っていて社会保険に加入されている方は、働きすぎると家族の扶養から外れてしまい、逆に損をする可能性があります。

被扶養者が被保険者となることは、これまでは本人負担ゼロで入れていた保険に、わざわざ保険料を払わなくてはいけなくなるからです。

これは通称106万の壁※とも呼ばれていますが、夫や親の扶養家族となっている方は、働きすぎによって損をしないように注意してください。
※2016年10月の法改正前は「130万の壁」と呼ばれていました。

退職しても社会保険を続けられる制度「任意継続」

日本は国民皆保険ですので、社会保険に加入していない人は自動的に国民健康保険に切り替えられます。

これまで社会保険に加入していた人が国民健康保険に切り替える際には、特別な手続きは不要で、保険料は税金と合算されて徴収されます。

また、勤め先を退職して社会保険から脱退する人は、退職日の翌日から国民健康保険に加入することになります。

しかし、何かとメリットの多い社会保険、できるなら退職後も脱退したくないと考える方もいるでしょう。

実はそんな人のために、企業の退職者も社会保険に加入し続けられる「任意継続」という制度があるのです。

社会保険の任意継続の加入条件

  • 社会保険の加入期間が2ヶ月以上であること。
  • 退職日の翌日から20日以内に各都道府県支部で手続きをすること。

上記の加入条件さえ満たせば、誰でも社会保険を継続することができます。

ただし任意継続できる期間は2年間が限度

退職後の社会保険の保険料は、とうぜんながら全額本人負担となりますが、一度でも滞納すると即脱退扱いとなるため、滞納にはくれぐれもご注意ください。

保険料が全額本人負担になることを考えると、扶養家族の人数によっては退職とともに国民健康保険に切り替えたほうが得かもしれません。

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退職時には、「任意継続」「国民健康保険に加入」という選択肢のほかにも、「社会保険に加入している家族(娘や息子など)の扶養家族に入れてもらう」という選択肢もあります。

判断できる期間は限られています。
定年退職や転職・独立の際には、前もって専門家に依頼するなどして、十分なシミュレーションをしておきましょう!