老後不安を吹っ飛ばせ!今からできるお金の管理と心構え

更新日:2019/07/02


ファイナンシャルプランナー 内山 貴博 氏
証券会社の本社部門に勤務後、独立。
FP相談業務を中心に、セミナー、金融機関研修、FPや証券外務員の資格対策講座などを担当。
経営者向けの経営と家計を融合したFP業務や、日本での生活やお金のことに疑問を抱える外国人に向けFPコンサルティング(英語)を開始するなど、FPとして貢献できることを日々模索中。

老後資金2,000万円足りない!?

筆者はマラソンが趣味で年に数回、各地のレースに出場するのが楽しみです。

時々、「一緒に42.195キロ走りませんか?」と友人や知人を誘うことがあるのですが、「嫌です!あんなキツそうなこと、絶対にしたくない。」と、多くのケースで断られます。

走るのが嫌いな読者の方は、おそらく同じように返答するでしょうね。では、以下の場合はどうですか?

レースに行くと、前夜祭があって、当日は沿道からたくさん応援してもらって、大会によっては途中で「給水」のみならず「給食」もあり、美味しいご当地グルメを楽しめて、ゴールした瞬間の達成感は他ではなかなか味わえないですよ。

ゴール後にも豚汁とおにぎりのサービスがあり、帰りの新幹線で仲間とレースを振り返りながら飲むビールは最高。日々の練習がダイエットになって、当日は旅行気分を味わえて、きっと世界観変わりますよ!

ここまで聞くといかがでしょうか?走るのが嫌いな方も、少しは興味関心を持つかもしれませんね。

実はお金についても同じことがいえます。

元号が変わってすぐの令和元年6月、「老後の生活費、年金だけでは2,000万円足りない」そんな報告書が話題となり、多くの人が将来への不安を口にしています。

金融審議会の市場ワーキンググループがまとめた報告書において、高齢化が加速する中、平均的な試算を行うと、老後の年金では月々の生活費を5万円程度カバーすることができない。

よって、つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)などの制度を通して、積極的に投資を行うことの重要性について指摘されています。

大きく問題視されたのが、この「投資」を促している点です。「年金だけでは足りないから投資をしなさい。」そう捉えられ、批判が集中しました。

「投資=こわい」
「投資=ギャンブル」
「投資=むずかしい」

こういった人が大半を占めていることを前提にしますと、やや不親切なレポートだったのかもしれません。

マラソンと聞いて「キツイ」と判断する人が多いように「投資」と聞いて拒否反応を示す人も多いのです。

また年金についても

「若い人は損をする」
「払うだけムダ」
「将来もらえない」

こういったイメージを持っている人も多いと思います。

でも、少なからず今後の少子高齢化など私たちを取り巻く環境を考えますと、積極的な投資とまではいかずとも、老後資金をはじめ、お金のことについて真剣に向き合わなければならないのは間違いありません。

ということで今回は、投資手法や保険の見直し、税金の仕組みといった難しいテーマではなく、誰でもできるお金のことで知っておきたい知識や心構えを紹介します。

  • ・将来よりも今を重視
  • ・お金の色分けを
  • ・お金の話を積極的にする

まずはこの3つを意識することから始めて、その後、実際に投資や資産運用といったステップを踏んでもらいたいです。

将来より今を重視

「将来のため、老後不安を吹き飛ばすためなのに?」と首をかしげる人もいそうですが…。

将来のためにお金を貯める、老後お金に困らないためにも、ぜひ「今日1日」に目を向けてください。

具体的に説明していくために、以下質問を用意しました。
皆さんはどちらがいいか、考えてみてください。

今、100万円あげます。もしくは、1年後に110万円をあげます。どちらがいいですか?

おそらく、「今100万円が欲しい」と思った人が多いでしょう。

1年後本当にもらえるかどうか分からないし、「とにかく今、お金を手にしたい」と考えるのはある意味当然のことです。

ただし、冷静に考えると、1年待てば10%もお金が増えています。現在の普通預金の金利は0.001%程度。それを考えると、1年後に受取る方が有利ですが、専門家である私も「今100万円もらいたい。」と回答するかもしれません。

ではここで、少し質問を変えます。

20年後に100万円あげます。もしくは、21年後に110万円をあげます。どちらがいいですか?

いかがでしょうか?

「20年後も21年後もそれほど大差ないし、多い方がいい。」と110万円を選んだ人が多いのでは?

最初の問題と「1年の差、10万円の差」であることには変わりがないのですが、この場合は金額が多い方を選ぶ傾向にあります。これを現在バイアスと言います。

双曲割引という理論でも説明されているのですが、簡単にいうと、私たちは将来を軽視し、現在を重視すると言うことです。

20年と21年の差はあまり気になりませんでしたよね?

「ずっと先のこと」として、1年の差をそれほど重要視しなかったので、単純に金額の大きい方を選びやすいのです。

では、これを踏まえて私たちはどのようにお金を管理すればよいのでしょうか?

「年金では生活できないから2,000万円貯めなければ!」と意気込んでも、例えば30歳の人にとってみれば35年後。随分先のことであるため、結局、軽視してしまい、上手に貯めることができない可能性があります。

もちろん、長期的な目標を持つことも重要ですが、まずは「今日いくら節約しよう」「余った分は貯金に回そう」といった具合に、今日の目標を立てることが重要です。

そして今日、その目標を達成できれば、翌日また同じように目標を立て、日々繰り返していきます。外食、お酒、たばこ、交通費など節約できるものはたくさんあります。

「毎日ビール2本飲んでいる人が1本にする」これも立派な節約で、その分をきちんと貯金していくことが大切です。

「2本飲んだと思って…」といいながら、貯金箱でもいいですし、定期的に銀行に預けてもいいでしょう。いかがですか?今日からできそうですよね。

「ダイエットは明日から」とよく聞きますが、そうではなく、「ダイエットまずは今日だけ」という発想です。

実際にダイエットや禁煙なども「今日」に重きを置くことで成功するという指摘もあります。「体に悪いからタバコを止めたい」と思っていても、いつか大きな病気になるかもしれないという「将来のリスク」を軽視してしまい、今日の一服が勝ってしまい、禁煙を妨げてしまいます。

「まずは今日1日がんばってみよう。」

この発想が、あなたが今まで達成できなかった何かを成功に導いてくれるかもしれませんよ。

お金の色分けを

次にお金の色分けを行うようにしてください。原則は「使う」・「守る」・「ふやす」の3つです。

「使う」・・・日々の生活費、交際費など
「守る」・・・1年後や2年後などに必要になるもの(子供の教育費など)
「ふやす」・・・しばらく使わないお金⇒老後を視野に入れる

このように3つに分けてください。具体的には3つの銀行通帳に分けてもいいですし、封筒で管理している人もいます。

もしかしたら「今、余裕がなくて、しばらく使わないお金なんてない。」という人もいるかもしれませんが、その場合でも「色分けする」という意識は持ち、「ふやす」用の受け皿だけでも用意しておいてください。

色分けをしていない場合、臨時収入があると、ついすぐに使ってしまうかもしれません。

一方、色分けをしておくことで、「このお金をどうすべきか」ということを考える機会にもなります。

「1年後に車検があるから、このお金は「守る」お金としてB銀行の通帳に入れておこう」「今回の臨時ボーナスは、無かったものとして「ふやす」お金としよう」など、このように色分けをすることでお金の管理がしやすくなります。

すると、3つの色をすべて銀行通帳や封筒で管理する必要がないことに気付くはずです。10年も20年も使わない「ふやす」ためのお金は、長期間銀行に置いていれば利息収入も積み重なっていきますが、現在の金利状況を考えると別の手段でもよさそうです。

文字通り「ふやす」ために「証券会社に口座を開設してみようか?」という発想につながれば1ランクレベルアップです。

そして、青や赤といった純色がグラデーションで濃淡をつけることができるように、「ふやす」という色の中でもリスクやリターンの度合い、ドルやユーロなど通貨の違いなどで鮮やかに描けるようになると、さらにワンランクアップです。

これを「分散投資」といいます。

例えば、野球の場合も「投手」「捕手」「野手」といった分け方ができますよね。そして「野手」においても足が速い選手や本塁打がたくさん打てる選手など様々なタイプの選手がいるチームの方が強い印象があると思います。

長いシーズン、優勝に向けて何があるか分かりません。お金も同じです。

長い人生を勝ち抜いていくために、分散投資を意識してください。

そして、そのためには「どういった投資対象や預け先があるのか」と興味を持ち、調べることからはじめてみてください。

お金の話を積極的に

最後は「積極的にお金の話をしましょう」ということですが、一番シンプルで簡単なようで、一番難しいことでもあります。

私たち日本人は元来、「お金の話をすることは汚い」といった風潮があります。これがお金の管理を保守的、内向的にし、結果として上手にお金と向き合えていないといわれています。

日本人は世界各国に比べ、お金に関する知識や判断力(金融リテラシーといいます)が低いと指摘されており、冒頭で触れました報告書でも「金融リテラシーを向上」させることが重要であるという記載もあります。

また、筆者が調べたデータによりますと、日本人の夫婦においては、圧倒的に妻がお金を管理し、夫婦共同で管理する割合は非常に少ないということが分かりました。

一方、世界標準は「夫婦共同管理」です。多くの国で、夫でもなく、妻でもなく、夫婦共同で管理している割合が高いのです。

夫婦で定期的にお金の話をしながら管理をする。その結果、夫婦間で情報交換することとなり、より良いお金の管理にもつながるでしょう。

別の調査ですが、日本人は「お金に関する注意力」も他国に比べて圧倒的に低いことが分かりました。

年々、これだけ注意喚起されているにも関わらず、振込め詐欺や悪質な投資詐欺などの被害が無くならないどころか、被害額が増えている状況にあるのも納得です。これらは一連の負の連鎖ともいえそうです。

「お金の話をしない」⇒「夫はお金に無頓着」⇒(リタイアして退職金を手にする)⇒「よく分からない投資の話に勧誘される」⇒詐欺被害

夫婦に限らず、友人知人や同僚など周りの人と「お金の話をする」のは今からでも始められます。

積極的に話すためには積極的に情報を入手しなければなりません。「お金のこと」というトピックスに偏見を持つことなく、接点を増やしてください。

執筆者からのコメント
内山 貴博 さん

老後不安を吹っ飛ばすために、すぐにでもできそうなお金の管理方法や心構えをお伝えしました。

「年金だけでは足りない」
「貯蓄も満足にできない」
「医療や介護にどれだけお金がかかるか分からない」

など、様々な不安があると思いますが、まずは今のうちからお金の知識を身に付けて、できることから始めてみてください。

大きく3つ紹介しましたが、いずれも難しい話ではなかったと思います。

特に最後の「お金の話を積極的に行う」という点は、意識してほしいです。

子どもの頃、予防注射の順番を待っている時に、「どれだけ痛いのだろうか?」と不安を感じたことがある人も多いはずです。私もそうでした。

この不安の解決方法は1つ、注射が終わった人に「痛かった?」と聞くほかありませんでした。

私たちが漠然と抱えている老後への不安も、まさに同じようなことがいえそうです。

積極的にお金の話をすることで、既に年金生活をしている人から貴重な意見が聞ける可能性もあります。

「若いうちにもう少し準備をしておけばよかった。」といった後悔談を聞きながら、今のうちにどうすべきか、人生の大先輩からアドバイスをもらってください。

そして、とにかく「今日1日」小さな目標を立て、それをクリアすることで、その積み重ねが大きな不安を軽減してくれるはずです。

「老後2,000万円問題」として話題となった報告書は51ページからなり、その冒頭は「長寿化」について触れられています。

「長生きのリスク」という表現も近年よく使われますが、リスクではなく、長生きできることへ純粋に喜びを感じたいものです。

そのカギになるのが上手なお金の管理。今日からできることをはじめてみて、長い人生、無事完走したいものですね。